チルゼパチドの作用機序|GLP-1/GIPデュアルアゴニストとは

2026/9/7

チルゼパチド(tirzepatide)は、GLP-1受容体とGIP受容体という二つの受容体に同時に作用する、「デュアルアゴニスト」と呼ばれる比較的新しいタイプの薬剤です。本記事では、この作用機序について、土台となるインクレチンホルモンの基礎知識から順を追って解説します。

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チルゼパチドとは

チルゼパチドは、一般名「チルゼパチド(tirzepatide)」、日本での商品名「マンジャロ皮下注アテオス」の注射薬です。週1回の皮下注射で投与するこの薬剤は、2022年9月26日に2型糖尿病の治療薬として国内で製造販売承認を取得しました1。

重要な点として、日本においてマンジャロが承認されている効能・効果は2型糖尿病のみです。 マンジャロは肥満症の適応を取得していません。肥満・ダイエット目的での使用は、承認された効能・効果の範囲外での使用(適応外使用)にあたり、公的医療保険は適用されず自由診療となります1。

インクレチンホルモン(GLP-1とGIP)の基礎知識

チルゼパチドの作用機序を理解する鍵は、「インクレチン」と呼ばれるホルモンにあります。インクレチンとは、食事の摂取に応じて消化管から分泌され、インスリン分泌を促進するホルモンの総称です。代表的なものが、GLP-1 と GIP の2種類です。

GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)

GLP-1は、主に小腸下部のL細胞から食後に分泌されるホルモンです。その作用は多彩で、代表的なものは次のとおりです2。

  • インスリン分泌の促進:血糖値に依存してインスリン分泌を増やします
  • グルカゴン分泌の抑制:血糖値を上げるホルモンであるグルカゴンの分泌を抑えます
  • 食欲の抑制:脳の満腹中枢に作用し、食欲を低下させます
  • 胃排出の遅延:胃から小腸への食物の移動を遅くし、食後の血糖上昇を緩やかにします

GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)

GIPは、主に小腸上部のK細胞から分泌される、もう一つのインクレチンホルモンです。GLP-1と同様にインスリン分泌を促す作用を持つ一方、脂肪組織や骨代謝にも関与していることが知られています3。

チルゼパチドの作用機序:GLP-1/GIPデュアルアゴニストの仕組み

チルゼパチドは、GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)とGIP受容体作動薬の作用を一つの分子に併せ持つGLP-1/GIPデュアルアゴニストです3。

従来のGLP-1受容体作動薬(セマグルチドやリラグルチドなど)がGLP-1受容体のみに作用するのに対し、チルゼパチドはGLP-1受容体とGIP受容体の両方を同時に活性化します。この二重の受容体刺激により、次のような薬理作用が想定されています3。

  • GLP-1経路を介した血糖降下作用・食欲抑制作用
  • GIP経路を介したインスリン分泌促進・脂肪代謝への作用
  • 二つの経路を介した血糖および体重に関わる代謝への作用

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血糖降下と体重減少のメカニズム

チルゼパチドによる血糖降下と体重減少は、複数のメカニズムが組み合わさって実現されます。

血糖降下のメカニズム

  1. 血糖依存的なインスリン分泌促進:GLP-1受容体とGIP受容体の両方を介して膵臓のベータ細胞からのインスリン分泌を促します。血糖値が高いときにのみ作用するため、単独使用では低血糖のリスクが低いとされています。
  2. グルカゴン分泌の抑制:GLP-1経路を通じて、肝臓での糖新生を促進するグルカゴンの分泌を抑制します。
  3. 胃排出速度の調整:食後の急激な血糖上昇を抑えます。

体重減少のメカニズム

  1. 中枢性の食欲抑制:GLP-1受容体を介して視床下部の食欲中枢に作用し、食欲を低下させます。
  2. 胃排出遅延による満腹感の持続:食事後の満腹感が長く続くことで、自然な食事量の減少につながります。
  3. GIP経路を介した代謝改善:GIP受容体への作用が脂肪組織の代謝に影響を与えると考えられています。

日本での承認状況と適応

チルゼパチドの日本および海外での承認状況は以下のとおりです。

項目 日本 海外(米国等)
商品名(2型糖尿病) マンジャロ Mounjaro
商品名(肥満症) ゼップバウンド Zepbound
2型糖尿病 承認済(マンジャロ・2022年9月26日承認) 承認済
肥満症 承認済(ゼップバウンド・2024年12月27日承認/2025年3月19日薬価収載) 承認済(Zepbound)
保険適用(マンジャロ) 2型糖尿病のみ –

日本ではマンジャロの承認適応は2型糖尿病に限られます。1 同じ有効成分のチルゼパチドは、「ゼップバウンド」という製品名で2024年12月27日に肥満症治療薬として別途承認され、2025年3月19日に薬価収載、同年4月11日に発売されています4。2026年5月18日には中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(BMIが27kg/m2以上に該当する場合に限る)の適応が追加され、あわせて肥満症の対象が耐糖能障害(2型糖尿病、耐糖能異常等)を有する場合へ広がりました5。ただしマンジャロとゼップバウンドは別の製品として別個に承認されているため、当院が処方するマンジャロを肥満・体重管理目的で使用する場合は引き続き適応外使用であり、自由診療(全額自己負担)となります。ゼップバウンドが肥満症の適応を持つことは、マンジャロの適応外使用が承認された使い方であることを意味するものではありません。効果や安全性が十分に保証されるものではない点にご注意ください。

主な副作用と注意点

PMDA承認の添付文書に記載されている主な副作用・注意事項は以下のとおりです1。

主な副作用

  • 消化器症状:悪心(吐き気)、嘔吐、下痢などが比較的多く報告されています
  • 低血糖:特にSU薬(スルホニルウレア薬)やインスリンと併用する場合にリスクが高まります
  • 急性膵炎:まれですが重篤な副作用として報告があります
  • 胆嚢関連事象:胆石症や胆嚢炎などの報告があります

禁忌(使用してはいけない方)

  • 本剤の成分に対し過敏症の既往歴がある方
  • 糖尿病性ケトアシドーシスの方

副作用が疑われる症状が現れた場合は、速やかに主治医にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

Q. チルゼパチドとセマグルチド(オゼンピック)の違いは何ですか?

チルゼパチドはGLP-1受容体とGIP受容体の両方に作用する「デュアルアゴニスト」であるのに対し、セマグルチド(オゼンピック)はGLP-1受容体のみに作用する「GLP-1受容体作動薬」です3。作用する受容体が異なるため、薬理学的なプロファイルも異なります。なお日本では、マンジャロ・オゼンピックのいずれも承認されている効能・効果は2型糖尿病です。

Q. チルゼパチド(マンジャロ)は肥満治療に使えますか?

日本においてマンジャロが承認されている効能・効果は2型糖尿病のみです1。同じ成分のチルゼパチドは「ゼップバウンド」として日本でも肥満症治療薬の承認を取得していますが(2024年12月27日承認・2025年3月19日薬価収載・同年4月11日発売)、マンジャロとは別の製品として別個に承認されたものです4。当院で処方するマンジャロを肥満目的に使用する場合は適応外使用(自由診療・全額自己負担)となります。必ず医師と十分に相談のうえ、リスクとベネフィットを理解したうえでご検討ください。

Q. チルゼパチドの投与方法と頻度を教えてください

チルゼパチド(マンジャロ)は、専用の注射デバイス(アテオス)を使って、週1回、腹部・太もも・上腕のいずれかに皮下注射で投与します1。投与量は医師の判断により段階的に増量されます。

出典

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マンジャロ(適応外使用)に関する重要事項

ユアクリで扱うマンジャロ(チルゼパチド)を肥満・ダイエット目的で用いる場合の前提です。

  • 痩身(肥満・ダイエット)は国内で承認された効能ではありません(適応外使用)
  • 個人輸入ではなく、医師の診察にもとづく国内承認品の個別処方でお渡しします
  • 国内には肥満症で承認された医薬品(ウゴービ=セマグルチド、ゼップバウンド=チルゼパチド)が別に存在します
  • 諸外国の安全性等の情報は、国内承認薬と同水準に整理されていない場合があります
  • 適応外使用のため、医薬品副作用被害救済制度の対象外です
  • 主な副作用に吐き気・嘔吐・下痢・便秘などの消化器症状があり、低血糖等のリスクもあります。効果や副作用には個人差があり、医師の診察が前提です

免責事項

  • 本記事は医学的な情報提供を目的としたものであり、特定の治療法を推奨するものではありません。
  • 治療に関する判断は、必ず担当の医師にご相談ください。
  • 本記事の情報は執筆時点(2026年4月)のものであり、最新の承認状況・添付文書情報とは異なる場合があります。
  • 適応外使用(自由診療)は保険適用外であり、全額自己負担となります。効果・安全性が十分に保証されるものではありません。

参考文献


  1. 日本イーライリリー株式会社.「マンジャロ皮下注アテオス」電子添文(添付文書). 医薬品医療機器総合機構(PMDA)医療用医薬品情報. https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/rdDetail/iyaku/2499422G1024_1 (2026年9月23日確認) ↩↩↩↩↩↩

  2. Gandhi A, Phyu EM, Koom-Dadzie K, Dickson KB, Halm J. GLP-1 Receptor Agonists at the Crossroads of Circadian Biology, Sleep, and Metabolic Disease. Int J Mol Sci. 2026;27(6):2853. doi:10.3390/ijms27062853. PMID: 41898712.(総説)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41898712/ ↩

  3. Krauss Z, Hintz A, Fisk R. Tirzepatide: Clinical review of the “twincretin” injectable. Am J Health Syst Pharm. 2023;80(14):879-888. doi:10.1093/ajhp/zxad080. PMID: 37070418.(総説)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37070418/ ↩↩↩↩

  4. 田辺ファーマ株式会社. ニュースリリース(ゼップバウンド皮下注アテオスの承認・薬価収載・発売について). https://www.tanabe-pharma.com/ja/news/MTPC250319.html (2026年9月23日確認) ↩↩

  5. 田辺ファーマ株式会社. ニュースリリース(ゼップバウンド皮下注アテオスの効能・効果の追加について). https://www.tanabe-pharma.com/ja/news/rel_260601_2.html (2026年9月23日確認) ↩

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