糖尿病と肥満の関係|GLP-1受容体作動薬が両方に効く理由

2026/9/7

近年、糖尿病と肥満の治療において「GLP-1受容体作動薬」が注目を集めています。もともと2型糖尿病の治療薬として開発された薬剤が、なぜ肥満症にも効果を示すのでしょうか。本記事では、糖尿病と肥満の密接な関係とGLP-1受容体作動薬の仕組みを解説します。あわせて、日本での承認状況・保険適用・副作用についても、PMDA(医薬品医療機器総合機構)の承認情報や医学文献に基づいて整理します。

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糖尿病と肥満の関係とは

インスリン抵抗性がつなぐ悪循環

2型糖尿病と肥満は、互いに深く関連する疾患です。体脂肪が過剰に蓄積すると、インスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」が生じます。インスリン抵抗性が高まると、膵臓はより多くのインスリンを分泌しようとしますが、やがて膵臓の機能が追いつかなくなり、血糖値が慢性的に上昇します。これが2型糖尿病の発症メカニズムの一つです。

一方、高インスリン血症は脂肪の蓄積を促進するため、糖尿病がさらに肥満を悪化させるという悪循環が生まれます。

慢性炎症という共通基盤

肥満と糖尿病には、「慢性炎症」という共通の病態基盤があります。この関連は複数の研究でも指摘されています。過剰な脂肪組織は炎症性サイトカインを産生し、全身の慢性的な炎症状態を引き起こします。この慢性炎症がインスリン抵抗性をさらに悪化させ、動脈硬化や心血管疾患のリスクも高めます11。

また、肥満は少なくとも13種類のがんのリスク増加と関連していることが報告されており、体重管理の重要性はますます高まっています9。

GLP-1受容体作動薬とは|作用機序を解説

GLP-1の生理的な役割

GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)は、食事を摂ると小腸から分泌されるホルモン(インクレチン)の一種で、次のような生理的作用があります。

  • 血糖依存的なインスリン分泌促進: 血糖値が高いときにのみインスリンの分泌を促すため、低血糖を起こしにくい特徴があります
  • グルカゴン分泌の抑制: 血糖値を上昇させるグルカゴンの分泌を抑えます
  • 食欲の抑制: 脳の食欲中枢に作用し、満腹感を高めます
  • 胃排出の遅延: 胃から腸への食物の移動を遅くし、食後の血糖上昇を緩やかにします

なぜ糖尿病と肥満の両方に効くのか

天然のGLP-1の作用を模倣・増強する薬剤が、GLP-1受容体作動薬です。天然のGLP-1は体内で数分で分解されてしまいますが、GLP-1受容体作動薬は分解されにくく改良されており、長時間にわたって効果が持続します。

血糖降下作用により糖尿病を改善し、食欲抑制作用により体重減少をもたらすため、糖尿病と肥満の両方にアプローチできるのです。米国の電子カルテを用いた実臨床データの解析の一つでも、この多面的な変化が報告されています。GLP-1受容体作動薬の使用により、血糖値(HbA1c)の改善、血圧低下、体重減少がみられたというものです10。

※海外データについて: 上記の研究は米国の電子カルテデータに基づくリアルワールドエビデンスであり、日本人集団への直接的な外挿には注意が必要です。

日本で承認されているGLP-1受容体作動薬

日本で肥満症を効能・効果として承認されている医薬品は、ウゴービ(セマグルチド)とゼップバウンド(チルゼパチド)です。このほかに2型糖尿病を適応とするGLP-1受容体作動薬が複数あり、これらを肥満・痩身の目的で用いる場合は適応外使用(自由診療)にあたります。主な薬剤について、PMDA承認情報および製造販売元の公式発表に基づいて整理します。

※日付の読み方: 「承認」「薬価収載」「発売」は別の日付です。承認は国がその効能・効果での販売を認めた日、薬価収載は公的医療保険の価格表に載った日(実務上はここから保険で使えます)、発売は実際に医療機関への供給が始まった日を指します。

ウゴービ皮下注(セマグルチド)――肥満症・MASH治療薬

ウゴービ皮下注は、2023年3月27日に製造販売承認を取得し、2023年11月22日に薬価収載、2024年2月22日に発売されました2。2026年6月19日には、肝硬変を伴わない代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)の適応が追加されています3。

  • 適応: ①肥満症(高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、BMI27以上かつ2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する場合、またはBMI35以上の場合に限る)/②肝硬変を伴わない代謝機能障害関連脂肪肝炎(中等度または高度の線維化を有する場合に限る)1
  • 投与方法: 週1回の皮下注射
  • 保険適用: 上記の適応条件を満たす場合は保険適用。それ以外は自由診療

ゼップバウンド皮下注アテオス(チルゼパチド)――肥満症・睡眠時無呼吸治療薬

ゼップバウンド皮下注アテオスは、2024年12月27日に製造販売承認を取得し、2025年3月19日に薬価収載、2025年4月11日に発売されました4。2026年5月18日には中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の適応が追加され、あわせて肥満症の対象が「耐糖能障害(2型糖尿病、耐糖能異常等)」を有する場合へ広がっています5。

  • 有効成分: チルゼパチド。GLP-1受容体とGIP受容体の両方に作用するデュアルアゴニストに分類されます
  • 適応: ①肥満症(高血圧・脂質異常症・耐糖能障害(2型糖尿病、耐糖能異常等)のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、BMI27以上かつ2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する場合、またはBMI35以上の場合に限る)/②中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(BMI27以上に該当する場合に限る)5
  • 投与方法: 週1回の皮下注射
  • 保険適用: 上記の適応条件を満たす場合は保険適用

オゼンピック皮下注(セマグルチド)――2型糖尿病治療薬

オゼンピック皮下注は、2型糖尿病の治療薬として承認されている薬剤です7。

  • 適応: 2型糖尿病
  • 投与方法: 週1回の皮下注射
  • 保険適用: 2型糖尿病のみ。肥満症への処方は適応外です

注意: ウゴービとオゼンピックはどちらもセマグルチドが有効成分ですが、適応症と用量が異なります。肥満症の治療目的でオゼンピックを使用することは適応外使用に該当します。

ビクトーザ皮下注(リラグルチド)――2型糖尿病治療薬

ビクトーザ皮下注は、2型糖尿病の治療薬として承認されている薬剤です8。

  • 適応: 2型糖尿病
  • 投与方法: 1日1回の皮下注射
  • 保険適用: 2型糖尿病のみ

注意: 海外ではリラグルチドの高用量製剤「サクセンダ」が肥満症治療薬として承認されていますが、日本ではサクセンダは未承認です。日本でリラグルチドを肥満症目的に使用する場合は適応外使用(自由診療)に該当します8。

マンジャロ皮下注アテオス(チルゼパチド)――2型糖尿病治療薬

マンジャロ皮下注アテオスは、2022年9月26日に2型糖尿病の治療薬として製造販売承認を取得しています6。

  • 有効成分: チルゼパチド(ゼップバウンドと同一成分)
  • 適応: 2型糖尿病
  • 投与方法: 週1回の皮下注射
  • 保険適用: 2型糖尿病のみ。肥満症への処方は適応外です

注意: ゼップバウンドとマンジャロはどちらもチルゼパチドを有効成分としますが、日本ではそれぞれ別の製品として別個に承認されています。ゼップバウンドが肥満症の適応を持つことは、マンジャロを肥満・痩身の目的で用いることが承認された使い方であることを意味しません。マンジャロを体重減少の目的で使用する場合は適応外使用に該当し、公的医療保険は適用されず自由診療となります。

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GLP-1受容体作動薬の副作用と禁忌

安全に使用するためには、副作用と禁忌を正しく理解しておくことが重要です。

主な副作用

PMDA承認情報によると、以下の副作用が報告されています178。

副作用の種類 詳細
消化器症状 悪心、嘔吐、下痢(特に投与初期に多い)
低血糖 糖尿病治療薬(SU薬等)との併用時にリスク増加
急性膵炎 重篤な副作用として報告あり
胆嚢関連事象 胆石症、胆嚢炎
甲状腺関連 甲状腺髄様癌(動物実験での報告あり、ヒトでの因果関係は不明)

消化器症状は投与初期に多くみられますが、用量を段階的に増量することで軽減が期待されます。

※エビデンス限定的: セマグルチドの使用に関連して、重度のイレウスによる小腸閉塞や急性腎障害といった稀な症例も報告されています13。ただし、これは症例報告であり、因果関係は確立されていません。

禁忌事項

ウゴービ皮下注の禁忌として、以下が添付文書に記載されています1。

  • 甲状腺髄様癌の既往歴または家族歴のある方
  • 多発性内分泌腫瘍症2型の方
  • 本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある方
  • 糖尿病性ケトアシドーシスの方
  • 糖尿病性昏睡・前昏睡の方
  • 重度の胃不全麻痺等の重篤な胃腸障害のある方

筋肉量減少への注意

この薬剤による体重減少では、脂肪だけでなく除脂肪体重(筋肉量を含む)も減少することが報告されています。これにより、サルコペニア(筋肉量の低下)やフレイル(虚弱)のリスクが懸念されています12。

筋肉量の維持のためには、以下が推奨されています。

  • レジスタンストレーニング(筋力トレーニング)の実施
  • 十分なタンパク質摂取の確保
  • 定期的な身体機能の評価

保険適用と自由診療の違い

肥満症の治療にGLP-1受容体作動薬を用いる場合、保険適用の有無は薬剤と患者の条件によって異なります。

保険が適用されるケース

ウゴービ皮下注は、以下のすべてを満たす場合に保険適用となります。

  1. 高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のいずれかを有する
  2. 食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られない
  3. BMIが27以上かつ2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する、またはBMIが35以上

ゼップバウンド皮下注アテオスも、肥満症の適応条件を満たす場合に保険適用となります。合併症の条件は「高血圧、脂質異常症、耐糖能障害(2型糖尿病、耐糖能異常等)のいずれか」と定められています。また、中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(BMI27以上に該当する場合)も適応に含まれます。

適応外使用・自由診療となるケース

以下の場合は保険適用外(自由診療)となります。

  • ウゴービ・ゼップバウンドの保険適用条件を満たさない場合の肥満治療
  • オゼンピックを肥満症目的で使用する場合(承認適応は2型糖尿病のみ)
  • マンジャロを肥満症・体重減少の目的で使用する場合(承認適応は2型糖尿病のみ)
  • ビクトーザ(またはサクセンダ)を肥満症目的で使用する場合(日本ではサクセンダ未承認)

重要: 適応外使用の場合、副作用が生じた際に医薬品副作用被害救済制度の対象外となる可能性があります。必ず医師と十分に相談のうえ、治療方針を決定してください。

よくある質問(FAQ)

Q. GLP-1受容体作動薬は糖尿病がなくても使えますか?

肥満症の適応を持つウゴービ皮下注・ゼップバウンド皮下注アテオスは、高血圧・脂質異常症・耐糖能障害などの健康障害を有し、BMIの条件を満たす場合に保険適用となります。糖尿病がなくても、他の合併症条件を満たせば対象となる場合があります。詳しくは医師にご相談ください。

Q. オゼンピックとウゴービの違いは何ですか?

どちらも有効成分はセマグルチドですが、オゼンピックは2型糖尿病、ウゴービは肥満症と肝硬変を伴わない代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)が承認適応です。用量設定も異なるため、目的に応じて医師が適切な薬剤を選択します。オゼンピックを肥満症目的で使用することは適応外使用に該当します。

Q. ゼップバウンドとマンジャロは同じ薬ですか?

どちらも有効成分はチルゼパチドですが、日本では別の製品として別個に承認されています。ゼップバウンドは肥満症と中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群、マンジャロは2型糖尿病が承認された効能・効果です。マンジャロを体重減少の目的で使用することは適応外使用にあたり、公的医療保険は適用されず自由診療となります。

Q. GLP-1受容体作動薬の副作用にはどのようなものがありますか?

主な副作用として悪心・嘔吐・下痢などの消化器症状があり、特に投与初期に多くみられます。重篤な副作用として急性膵炎や胆嚢関連事象も報告されています。定期的な医師のフォローアップが重要です。

Q. GLP-1受容体作動薬で筋肉が落ちるって本当ですか?

体重減少に伴い、脂肪だけでなく筋肉量も減少することが報告されています。筋肉量の維持には、適切なタンパク質摂取とレジスタンストレーニング(筋力トレーニング)の併用が推奨されています。

Q. 日本でGLP-1受容体作動薬を肥満治療に使う場合、保険はききますか?

ウゴービ皮下注とゼップバウンド皮下注アテオスは肥満症が承認された効能・効果であり、合併症とBMIの条件を満たす場合に保険適用となります。オゼンピック・ビクトーザ・マンジャロは2型糖尿病が適応であり、肥満症のみを目的とした使用は適応外(自由診療)となります。

免責事項

本記事の内容は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を推奨するものではありません。治療に関する判断は必ず医師にご相談ください。

本記事に記載の薬剤情報は2026年9月時点のPMDA承認情報および製造販売元の公式発表に基づいています。最新の情報は医療機関または各製薬会社の公式情報をご確認ください。


出典

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マンジャロ(適応外使用)に関する重要事項

ユアクリで扱うマンジャロ(チルゼパチド)を肥満・ダイエット目的で用いる場合の前提です。

  • 痩身(肥満・ダイエット)は国内で承認された効能ではありません(適応外使用)
  • 個人輸入ではなく、医師の診察にもとづく国内承認品の個別処方でお渡しします
  • 国内には肥満症で承認された医薬品(ウゴービ=セマグルチド、ゼップバウンド=チルゼパチド)が別に存在します
  • 諸外国の安全性等の情報は、国内承認薬と同水準に整理されていない場合があります
  • 適応外使用のため、医薬品副作用被害救済制度の対象外です
  • 主な副作用に吐き気・嘔吐・下痢・便秘などの消化器症状があり、低血糖等のリスクもあります。効果や副作用には個人差があり、医師の診察が前提です

参考文献


  1. PMDA. ウゴービ皮下注(セマグルチド(遺伝子組換え))添付文書・承認情報. https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/rdDetail/iyaku/2499418G5023_1 ↩↩↩

  2. ケアネット(医療ニュース). ウゴービの製造販売承認(2023年3月27日)・薬価収載(2023年11月22日)・発売(2024年2月22日). https://www.carenet.com/news/general/carenet/58120 ↩

  3. ノボ ノルディスク ファーマ ニュースリリース. ウゴービ、肝硬変を伴わない代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)の効能追加承認を取得(2026年6月19日). https://www.novonordisk.co.jp/news/media/2026/06/20260619_1.html ↩

  4. ゼップバウンド皮下注アテオス 製造販売元ニュースリリース. 製造販売承認(2024年12月27日)・薬価収載(2025年3月19日)・発売(2025年4月11日). https://www.tanabe-pharma.com/ja/news/MTPC250319.html ↩

  5. ゼップバウンド皮下注アテオス 製造販売元ニュースリリース. 中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群の効能追加および肥満症の対象拡大(耐糖能障害)の承認取得(2026年5月18日). https://www.tanabe-pharma.com/ja/news/rel_260601_2.html ↩↩

  6. マンジャロ皮下注アテオス(チルゼパチド(遺伝子組換え))添付文書・承認情報(製造販売承認: 2022年9月26日/効能・効果: 2型糖尿病). https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00070640 ↩

  7. PMDA. オゼンピック皮下注(セマグルチド(遺伝子組換え))添付文書・承認情報. https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/rdDetail/iyaku/2499418G4027_1 ↩↩

  8. PMDA. ビクトーザ皮下注(リラグルチド(遺伝子組換え))添付文書・承認情報. https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/rdDetail/iyaku/2499410G1021_1 ↩↩↩

  9. Renehan AG, Pollak MN. Appetite, Obesity, Metabolism, and Malignancy: Do Incretin-Mimetic Drugs Reduce Cancer Risk? Cancer Prev Res (Phila). 2026;19(4):187-196. doi:10.1158/1940-6207.CAPR-26-0018. PMID: 41918364.(総説)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41918364/ ↩

  10. Mallette JH, Speed JS, Lirette ST, Moore D, Clemmer JS. Responses to GLP-1RA in White and Black Adults With Obesity: Insights From Generalized Additive Mixed Models of EHR Data. Obesity (Silver Spring). 2026;34(Suppl 2):109-118. doi:10.1002/oby.70180. PMID: 41919489.(実臨床EHR解析)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41919489/ ↩

  11. Beyond Weight Loss: Metabolic and Immunologic Power of GLP-1 Agonists in Plastic Surgery. PubMed. 2026. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41913544/ ↩

  12. Fat, muscle, and anti-obesity medications in cardiovascular disease prevention. PubMed. 2026. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41914150/ ↩

  13. A Rare Case of Semaglutide-Associated Small Bowel Obstruction Complicated by Acute Kidney Injury Requiring Dialysis. PubMed. 2026. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41913883/ ↩

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