食欲を抑える薬はある?医療で食欲をコントロールする方法
2026/9/7
「食欲が止まらない」「意志の力だけではどうしても食べ過ぎてしまう」――そう感じている方にとって、「食欲を抑える薬」の存在は気になるテーマかもしれません。医療の現場では、食欲をコントロールするために使われる薬剤がいくつか存在します。本記事では、食欲を抑える薬の種類・作用の仕組み・日本での承認状況を、エビデンスに基づいて整理します。
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食欲を抑える薬は実在する?医療用の食欲抑制薬とは
結論からお伝えすると、医療の現場では食欲を抑える作用を持つ薬剤が実際に使用されています。ただし、市販のダイエットサプリメントとは根本的に異なり、医師の診断と処方(または薬剤師の指導)のもとで使用する医薬品です。
作用の仕組みで分類すると、食欲を抑える薬は大きく以下のタイプに分けられます。
- GLP-1受容体作動薬(ウゴービ、オゼンピックなど):ホルモンの仕組みを利用して食欲を自然に抑える
- GLP-1/GIPデュアルアゴニスト(マンジャロ):GLP-1とGIPの2つのホルモン受容体に作用する
- 中枢性食欲抑制薬(サノレックス):脳の神経伝達物質に直接作用して食欲を低下させる
- 脂肪吸収阻害薬(アライ):食欲そのものではなく脂肪の吸収を抑える
以下で、それぞれの仕組みと特徴を詳しく整理します。
食欲を抑える薬の種類と作用機序
GLP-1受容体作動薬(ウゴービ・オゼンピックなど)
GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)は、食事をとると小腸から分泌されるホルモンです。GLP-1受容体作動薬は、このホルモンの作用を人工的に再現・増強することで、以下のメカニズムにより食欲を抑えます。
- 脳の食欲中枢への作用:視床下部の満腹中枢に働きかけ、食欲そのものを低下させます
- 胃排出の遅延:胃から腸への食物の移動を遅くし、食後の満腹感が長く続きます
- インスリン分泌の調整:血糖値の急激な変動を抑え、空腹感を軽減します
代表的な薬剤として、ウゴービ皮下注(セマグルチド)があります。ウゴービは2023年3月27日に肥満症を効能・効果として製造販売承認を取得し、2023年11月22日に薬価収載、2024年2月22日に発売されました1。保険適用の対象となるのは、高血圧・脂質異常症または2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、BMIが35以上、またはBMIが27以上で肥満に関連する健康障害を2つ以上有する方です。なお2026年6月19日には、肝硬変を伴わない代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)の適応が追加されています。週1回の皮下注射で投与します。
一方、オゼンピック皮下注(セマグルチド)やビクトーザ(リラグルチド)は、日本での承認適応が2型糖尿病のみです。そのため、肥満症の治療を目的とした使用は適応外(自由診療)となります。
マンジャロ(チルゼパチド)── GLP-1/GIPデュアルアゴニスト
マンジャロ(チルゼパチド)は、GLP-1受容体だけでなくGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)受容体にも作用する「デュアルアゴニスト」です。2つのホルモン受容体の両方に同時に働きかける点が、GLP-1受容体のみに作用する薬剤との構造上の違いです。
海外の症例報告では、遺伝性の過食症を有する患者において、チルゼパチドの投与後に空腹感の軽減と食後の満腹感の持続が確認されています2。ただしこれは1例の報告であり、そのまま一般化できるものではありません。
ただし、日本でのマンジャロの承認適応は2型糖尿病のみです。肥満症治療を目的とした使用は、承認された効能・効果の範囲外での使用(適応外使用)にあたり、公的医療保険は適用されず自由診療に該当します3。
なお、マンジャロと同じチルゼパチドを有効成分とするゼップバウンド皮下注アテオスは、2024年12月27日に肥満症を効能・効果として国内で承認され(2025年3月19日に薬価収載、2025年4月11日に発売)、2026年5月18日には中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群の適応追加と、肥満症の対象への耐糖能障害(2型糖尿病、耐糖能異常等)の追加が行われています4。ただしゼップバウンドとマンジャロは、日本ではそれぞれ別の製品として別個に承認されています。ゼップバウンドが肥満症の適応を持つことは、マンジャロの適応外使用が承認された使い方であることを意味しません。
マジンドール(サノレックス)── 中枢性食欲抑制薬
サノレックス(マジンドール)は、高度肥満症に対する保険適用が認められている中枢性食欲抑制薬です(GLP-1受容体作動薬ではありません)。脳内のノルアドレナリン・ドーパミン・セロトニンの再取り込みを阻害することで、食欲中枢に直接作用して食欲を低下させます。
適応は高度肥満症(肥満度が+70%以上またはBMIが35以上)に限られ、あらかじめ適用した食事療法・運動療法の効果が不十分な場合の補助として使用されます。依存性があるため、投与期間は最長3か月に制限されている点が大きな特徴です。
主な副作用として、口渇・便秘・不眠・動悸などが報告されています。
オルリスタット(アライ)── 脂肪吸収阻害薬
アライ(オルリスタット)は、2023年2月17日に日本で製造販売承認を取得し、2024年4月8日に発売された要指導医薬品(OTC)です5。処方箋は不要で、薬局にて薬剤師の対面指導のもと購入できます。
アライは食欲を抑える薬ではありません。消化管内のリパーゼ(脂肪分解酵素)を阻害し、食事に含まれる脂肪の吸収を抑えて便として排出させるという仕組みです。BMI25以上で腹囲が基準を超える方が対象となります。
主な副作用は油性便・脂肪便・排便増加です。また、脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の吸収が低下する可能性があるため、必要に応じてビタミンの補給が推奨されます。
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日本での承認状況と保険適用の整理
以下の表に、食欲を抑える薬(および関連する肥満治療薬)の日本での位置づけをまとめます。
| 薬剤名 | 作用 | 肥満症への保険適用 | 入手方法 |
|---|---|---|---|
| ウゴービ(セマグルチド) | 食欲抑制・胃排出遅延 | ○(BMI≧35、またはBMI≧27かつ肥満関連の健康障害2つ以上) | 医師の処方 |
| ゼップバウンド(チルゼパチド) | 食欲抑制・胃排出遅延 | ○(BMI≧35、またはBMI≧27かつ肥満関連の健康障害2つ以上) | 医師の処方 |
| サノレックス(マジンドール) | 中枢性食欲抑制 | ○(適応名は高度肥満症/BMI≧35等) | 医師の処方 |
| オゼンピック(セマグルチド) | 食欲抑制・胃排出遅延 | ×(2型糖尿病のみ) | 医師の処方(自由診療) |
| マンジャロ(チルゼパチド) | 食欲抑制・胃排出遅延 | ×(2型糖尿病のみ) | 医師の処方(自由診療) |
| アライ(オルリスタット) | 脂肪吸収阻害 | ×(OTC) | 薬局(薬剤師指導) |
ゼップバウンドとマンジャロは同じチルゼパチドを有効成分としますが、日本では別製品として別個に承認されています。サノレックスはGLP-1受容体作動薬ではなく、適応名も「肥満症」ではなく「高度肥満症」です。
自由診療の場合、費用は全額自己負担となります。治療費は薬剤や医療機関によって異なりますが、月額数万円から十数万円が目安です。
副作用とリスク ── 始める前に知っておくべきこと
安全に使うためには、副作用への理解が欠かせません。食欲を抑える薬には、それぞれ特有のリスクがあります。
GLP-1受容体作動薬・マンジャロの主な副作用:
– 悪心(吐き気)・嘔吐・下痢・便秘などの消化器症状(特に投与初期に多い)
– 重大な副作用として急性膵炎、胆嚢関連事象の報告がある
– 甲状腺髄様癌の既往・家族歴がある方は使用できない(禁忌)
サノレックスの主な副作用:
– 口渇・便秘・不眠・動悸
– 依存性(アンフェタミン類似構造)があるため、漫然とした長期投与は禁忌
– 緑内障、重症高血圧、薬物依存の既往がある方は使用不可
アライの主な副作用:
– 油性便・脂肪便・排便回数の増加
– 脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の吸収低下
– 慢性吸収不良症候群、胆汁うっ滞のある方は使用不可
いずれの薬剤も、自己判断での使用は避け、必ず医師または薬剤師の指導のもとで使用してください。
食欲を抑える薬を安全に使うために
必ず医療機関を受診する
医師は、患者さんの状態を踏まえたうえで食欲を抑える薬を処方します。SNSや個人輸入サイトで入手した未承認薬を自己判断で使用すると、重大な健康被害につながるリスクがあります。必ず医療機関を受診し、適切な診断を受けた上で治療を開始してください。
薬だけに頼らず、生活習慣の改善を
食事療法・運動療法と併用してこそ、食欲を抑える薬は十分な効果を発揮します。薬の服用を中止すると、リバウンドする可能性があります。治療中から食生活の見直しや適度な運動習慣を身につけておくことが重要です。
オンライン診療という選択肢
近年では、肥満症治療を行うオンラインクリニックも増えてきています。自宅にいながら医師の診察を受け、適切な薬剤の処方を受けることが可能です。通院の負担を軽減しつつ、医師の管理のもとで安全に治療を進められる点がメリットです。
よくある質問(FAQ)
Q. 食欲を抑える薬は市販で買えますか?
現在の日本に、食欲を直接抑える市販薬はありません。アライ(オルリスタット)は薬局で購入できます。ただし脂肪の吸収を阻害する薬であり、食欲を抑える作用はありません。GLP-1受容体作動薬やサノレックスは医師の処方が必要です。
Q. 食欲を抑える薬にはどんな副作用がありますか?
GLP-1受容体作動薬は悪心・嘔吐・下痢などの消化器症状が代表的です。サノレックスは口渇・便秘・不眠に加え、依存性のリスクがあります。アライは油性便・脂肪便が主な副作用です。いずれも医師の管理下で適切に対処できます。
Q. マンジャロは食欲を抑える効果がありますか?
マンジャロ(チルゼパチド)は、GLP-1受容体とGIP受容体の両方に作用する薬剤です。ただし、日本での承認適応は2型糖尿病のみであり、肥満治療目的での使用は適応外使用(自由診療)に該当します。同じチルゼパチドを有効成分とするゼップバウンドは日本で肥満症の適応を取得していますが、マンジャロとは別製品・別承認であり、マンジャロの適応外使用が承認された使い方であることを意味しません。
Q. 食欲を抑える薬はどのくらいの期間使えますか?
サノレックスは依存性があるため、投与期間は3か月が限度とされています。ウゴービなどのGLP-1受容体作動薬やマンジャロ(チルゼパチド)は継続的な使用が想定されていますが、治療期間は医師と相談の上で個別に決定します。
まとめ
食欲を抑える薬は確かに存在し、医療の世界では肥満症治療の有効な選択肢として活用されています。ホルモンの仕組みを利用して自然に食欲を抑制するのが、GLP-1受容体作動薬とマンジャロです。脳に直接作用する食欲抑制薬がサノレックスであり、脂肪の吸収を阻害するアプローチをとるのがアライです。
自己判断で薬を使わず、必ず医師の診察を受けることが治療を始める前の大前提です。自分に合った治療法を見つけるためにも、まずは医療機関に相談してみてください。
出典
本記事は一次資料(医薬品添付文書・査読済み論文・製造販売元の公式発表)に基づいて編集しています。一般的な医療情報の提供を目的としたものであり、診断・治療の代替となるものではありません。個別の判断は医師にご相談ください。
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マンジャロ(適応外使用)に関する重要事項
ユアクリで扱うマンジャロ(チルゼパチド)を肥満・ダイエット目的で用いる場合の前提です。
- 痩身(肥満・ダイエット)は国内で承認された効能ではありません(適応外使用)
- 個人輸入ではなく、医師の診察にもとづく国内承認品の個別処方でお渡しします
- 国内には肥満症で承認された医薬品(ウゴービ=セマグルチド、ゼップバウンド=チルゼパチド)が別に存在します
- 諸外国の安全性等の情報は、国内承認薬と同水準に整理されていない場合があります
- 適応外使用のため、医薬品副作用被害救済制度の対象外です
- 主な副作用に吐き気・嘔吐・下痢・便秘などの消化器症状があり、低血糖等のリスクもあります。効果や副作用には個人差があり、医師の診察が前提です
免責事項
本記事は医療情報の提供を目的としたものであり、特定の治療法を推奨するものではありません。治療に関する判断は必ず医師にご相談ください。自由診療は保険適用外のため、費用は全額自己負担となります。本記事に記載の薬剤情報は執筆時点(2026年4月)のものです。最新の添付文書・承認情報はPMDAの公式サイトでご確認ください。
参考文献
-
ノボ ノルディスク ファーマ株式会社.「ウゴービ皮下注 SD」電子添文(添付文書). 医薬品医療機器総合機構(PMDA)医療用医薬品情報. https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/rdDetail/iyaku/2499418G5023_1 (2026年9月23日確認) ↩
-
van der Walle EEPL, Boon MR, van Rossum EFC, van den Akker ELT. Tirzepatide and Metformin Effects on Hunger and BMI in an Adolescent with Hyperphagia and Severe Obesity due to MC4R Deficiency: A Case Report. Obes Facts. 2026:1-7. doi:10.1159/000551729. PMID: 41926561.(症例報告・1例。一般化できない)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41926561/ ↩
-
日本イーライリリー株式会社.「マンジャロ皮下注アテオス」電子添文(添付文書). 医薬品医療機器総合機構(PMDA)医療用医薬品情報. https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/rdDetail/iyaku/2499422G1024_1 (2026年9月23日確認) ↩
-
田辺ファーマ株式会社・日本イーライリリー株式会社. ニュースリリース(ゼップバウンド皮下注アテオスの承認・薬価収載・発売、および効能・効果の追加). https://www.tanabe-pharma.com/ja/news/MTPC250319.html / https://www.tanabe-pharma.com/ja/news/rel_260601_2.html (2026年9月23日確認) ↩
-
大正製薬株式会社.「アライ」添付文書(要指導医薬品). 医薬品医療機器総合機構(PMDA)一般用医薬品・要指導医薬品情報. https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcDetail/ResultDataSetPDF/400059_K2403000019_01_01/A (2026年9月23日確認) ↩