GLP-1受容体作動薬の長期使用は安全?5年以上のデータを確認

2026/9/7

GLP-1受容体作動薬の長期使用における安全性を解説。日本での承認薬(ビクトーザ・オゼンピック・ウゴービ・ゼップバウンド)の使用実績、FDAデータやリアルワールドエビデンスに基づく長期安全性の知見、注意すべき副作用・禁忌まで、PMDA・PubMedのエビデンスに基づいてまとめています。


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GLP-1受容体作動薬の長期使用に関するエビデンスの現状

GLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病の治療薬として開発され、現在では肥満症治療にも適応が広がっている薬剤群です。「長期間使い続けて大丈夫なのか」という疑問を抱く患者さんは少なくありません。

結論から述べると、GLP-1受容体作動薬には10年以上の臨床使用実績があり、一定の長期安全性データが蓄積されています。ただし、5年以上の大規模な長期データはまだ十分とはいえず、継続的な研究が進められている段階です5。

現在得られているエビデンスを正しく理解したうえで、医師と相談しながら治療を続けることが大切です。

日本での承認状況と使用実績

日本で使用されている主なGLP-1受容体作動薬の承認状況と使用実績は以下のとおりです。

薬剤名 国内での製造販売承認 承認された効能・効果(日本) 承認からの経過
ビクトーザ皮下注(リラグルチド) 2010年6月 2型糖尿病 約16年
オゼンピック皮下注(セマグルチド) 2020年6月 2型糖尿病 約6年
ウゴービ皮下注(セマグルチド) 2023年3月27日 肥満症/肝硬変を伴わない代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH・2026年6月追加) 約3年半
ゼップバウンド皮下注アテオス(チルゼパチド) 2024年12月27日 肥満症/中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS・2026年5月追加) 約1年9ヶ月

なお、「承認」「薬価収載」「発売」は別の日付です。国が効能・効果を認めた日が承認日、公的医療保険の価格表に載った日が薬価収載日、実際に医療機関への供給が始まった日が発売日で、薬によっては1年近く離れることがあります。上の表は製造販売承認日を基準にしています。

最も長い使用実績を持つのはビクトーザ皮下注(リラグルチド)で、2010年の承認から16年が経過しています2。ただし、ビクトーザの国内での承認は2型糖尿病に限られており、肥満・痩身を目的とした使用は適応外使用にあたります2。

日本で肥満症を効能・効果として承認されている医薬品は、ウゴービ皮下注(セマグルチド)とゼップバウンド(チルゼパチド)の2剤です1。ウゴービは2023年3月27日に製造販売承認を取得し、2023年11月22日に薬価収載、2024年2月22日に発売されました。ゼップバウンドは2024年12月27日に承認、2025年3月19日に薬価収載、2025年4月11日に発売されています8。

承認された効能・効果は、その後に追加されることがあります。ゼップバウンドは2026年5月18日に中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(BMIが27kg/m²以上に該当する場合に限る)の適応が追加され、あわせて肥満症の対象が耐糖能障害(2型糖尿病、耐糖能異常等)を有する場合へ広がりました9。ウゴービは2026年6月19日に、肝硬変を伴わない代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)の適応を追加で取得しています10。

ゼップバウンドはマンジャロと同じチルゼパチドを有効成分としますが、日本ではそれぞれ別の製品として別個に承認されています。ゼップバウンドが肥満症の適応を持つことは、マンジャロの適応外使用が承認された使い方であることを意味しません。

重要: 肥満症治療としての長期使用を検討する場合、ウゴービ皮下注とゼップバウンドが日本で承認された選択肢です。それ以外の薬剤(マンジャロ・オゼンピック・ビクトーザ等)をダイエット目的で使用する場合は適応外使用(自由診療)に該当します。

5年以上の長期安全性データ:何がわかっているか

FDA規制データに基づく安全性分析

FDAの医療レビューに基づき、GLP-1受容体作動薬を含む14種類の肥満・糖尿病治療薬の安全性を比較した分析(対象:34,280名の安全性データ)が報告されています4。

この分析によると、GLP-1受容体作動薬は非GLP-1薬と比較して以下の傾向が示されました:

  • 死亡リスク: 体重管理用GLP-1受容体作動薬のリスク比(RR)は0.7、2型糖尿病用でも0.7と、いずれも非GLP-1薬(RR: 0.8)より低い傾向
  • 重篤な有害事象: 結果はばらつきがあり、一概に安全とは言い切れない
  • 市販後の腫瘍報告: 非GLP-1薬で0.9%、体重管理用GLP-1受容体作動薬で5.4%、2型糖尿病用で4.1%

ただし、この分析ではサンプルサイズの限界が指摘されており、長期安全性の確立にはさらなるリアルワールドエビデンスが必要とされています4。

リアルワールドデータからの知見

35,336組の傾向スコアマッチングによるリアルワールド研究では、チルゼパチド(GLP-1/GIP受容体作動薬)とセマグルチドの安全性を比較しています6。

この研究では、12ヶ月間のフォローアップにおいて、両薬剤間で有害事象の発生率に有意差はなく、新たな安全性シグナルは認められませんでした6。

これらのデータは、GLP-1受容体作動薬が中期的(1〜2年)には比較的安全に使用できることを示唆していますが、5年以上の超長期データについてはまだ十分ではありません。

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長期使用で注意すべき副作用・リスク

長期使用を検討するうえで、以下の副作用・リスクを理解しておきましょう。

消化器症状(悪心・嘔吐・下痢)

GLP-1受容体作動薬の最も一般的な副作用は消化器症状です。悪心(吐き気)、嘔吐、下痢は特に投与初期に多く見られます123。

長期使用においては、用量を段階的に増やすことで多くの場合は軽減されます。ただし、症状が持続する場合は用量調整や治療の見直しが必要です。

膵炎・胆嚢関連事象

急性膵炎はすべてのGLP-1受容体作動薬で重大な副作用として報告されています123。

また、ウゴービ皮下注の添付文書では胆石症・胆嚢炎も長期使用に伴うリスクとして記載されています1。

激しい腹痛、持続する背部痛などの症状が出た場合は、速やかに医師に相談する必要があります。

甲状腺への影響

動物実験において甲状腺髄様癌の発生が報告されていますが、ヒトでの因果関係は現時点では確立されていません1。

また、GLP-1受容体作動薬による体重減少に伴い、レボチロキシン(甲状腺ホルモン薬)を服用中の方は用量調整が必要になる可能性があります。Medicareの5,370名を対象としたコホート研究では、GLP-1受容体作動薬開始後の甲状腺機能モニタリングが不十分であることが指摘されています7。

甲状腺疾患の既往がある方は、長期使用中も定期的に甲状腺機能を検査してもらいましょう。

長期使用が禁忌となる方

以下に該当する方は、GLP-1受容体作動薬(ウゴービ皮下注)を使用できません1:

  • 甲状腺髄様癌の既往歴または家族歴がある方
  • 多発性内分泌腫瘍症2型の方
  • 本剤の成分に対し過敏症の既往歴がある方
  • 糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡・前昏睡の方
  • 重度の胃不全麻痺等の重篤な胃腸障害のある方

長期使用を開始する前に、これらの禁忌事項に該当しないかを、既往歴・家族歴も含めて医師に正確に伝えておきましょう。

長期使用を安全に続けるためのポイント

GLP-1受容体作動薬を長期間安全に使用するために、以下のポイントを押さえておきましょう。

  1. 定期的な医師のフォローアップを受ける: 副作用の早期発見、用量調整、血液検査(膵酵素・甲状腺機能等)のために定期的な受診が欠かせません
  2. 自己判断で中断・再開しない: 用量変更や中断は必ず医師と相談のうえで行ってください
  3. 甲状腺機能のモニタリング: 特にレボチロキシンを服用中の方は、体重変化に応じて甲状腺機能を定期的に確認しましょう7
  4. 異常症状は早めに報告する: 激しい腹痛、持続する嘔吐、首の腫れなど、普段と違う症状が出た場合は速やかに医師に相談してください
  5. 食事・運動療法を並行する: 薬だけに頼らず、食事療法・運動療法を含めた総合的な体重管理を継続しましょう5
  6. 正規の医療機関で処方を受ける: 個人輸入や非正規ルートでの入手は、偽造品リスクを含む重大な健康被害の可能性があります

まとめ

GLP-1受容体作動薬の長期安全性について、現時点でわかっていることをまとめます。

  • 日本で最も長い使用実績を持つリラグルチド(ビクトーザ)は16年の臨床使用実績があり、長期的な安全性プロファイルが蓄積されています
  • FDAデータやリアルワールド研究では、中期的(1〜2年)には比較的良好な安全性が示されています
  • ただし、5年以上の大規模な長期安全性データはまだ十分ではなく、継続的な研究が必要です5
  • 膵炎・胆嚢関連事象・甲状腺への影響など、長期使用で注意すべきリスクがあります
  • 安全な長期使用のためには、定期的な医師のフォローアップが重要です

GLP-1受容体作動薬の長期使用を検討している方は、まずは医師に相談し、ご自身の健康状態やリスク要因を踏まえた治療計画を立てることをおすすめします。


よくある質問(FAQ)

Q. GLP-1受容体作動薬を何年も使い続けて大丈夫ですか?

リラグルチド(ビクトーザ)は日本で16年の使用実績があり、2型糖尿病治療では長期使用のデータが蓄積されています。ただし、肥満症治療での超長期(5年以上)のデータはまだ十分ではなく、定期的な医師のフォローアップのもとで使用することが重要です25。

Q. GLP-1受容体作動薬の長期使用で癌リスクは上がりますか?

動物実験で甲状腺髄様癌の報告がありますが、ヒトでの因果関係は確立されていません。FDAデータ分析では市販後の腫瘍報告率に差が見られましたが、サンプルサイズの限界もあり、確定的な結論は出ていません14。長期使用中は定期検査を受けてください。

Q. 長期使用中に特に注意すべき検査は何ですか?

膵酵素(アミラーゼ・リパーゼ)の測定、甲状腺機能検査、胆嚢の定期的なチェックが推奨されます。特にレボチロキシン服用中の方は、体重変化に応じた甲状腺機能モニタリングが重要です7。

Q. ウゴービとオゼンピックの長期安全性に違いはありますか?

どちらもセマグルチドが有効成分ですが、承認された効能・効果と用量が異なります。オゼンピックの国内での承認は2型糖尿病に限られており、ウゴービは肥満症、および肝硬変を伴わない代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)を効能・効果として承認されています13。なお、日本で肥満症を効能・効果として承認されている医薬品は、ウゴービとゼップバウンド(チルゼパチド)の2剤です。どの薬剤が適するかは、既往歴や併存疾患を踏まえた医師の判断によります。

Q. GLP-1受容体作動薬の長期使用は一生続ける必要がありますか?

肥満は慢性疾患と位置づけられており、薬剤中止後の体重再増加が報告されています。長期使用の必要性は個々の状態によって異なるため、医師と相談のうえで治療計画を立ててください5。


免責事項

  • ※この記事は医療情報の提供を目的としたものであり、特定の治療法を推奨するものではありません。治療の判断は必ず医師にご相談ください。
  • ※記事の内容は公開時点のものであり、承認状況・保険適用は変更される場合があります。最新情報はPMDA等の公式情報をご確認ください。
  • ※GLP-1受容体作動薬の肥満症目的での使用は、薬剤・用量によっては適応外使用に該当する場合があります。

出典

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マンジャロ(適応外使用)に関する重要事項

ユアクリで扱うマンジャロ(チルゼパチド)を肥満・ダイエット目的で用いる場合の前提です。

  • 痩身(肥満・ダイエット)は国内で承認された効能ではありません(適応外使用)
  • 個人輸入ではなく、医師の診察にもとづく国内承認品の個別処方でお渡しします
  • 国内には肥満症で承認された医薬品(ウゴービ=セマグルチド、ゼップバウンド=チルゼパチド)が別に存在します
  • 諸外国の安全性等の情報は、国内承認薬と同水準に整理されていない場合があります
  • 適応外使用のため、医薬品副作用被害救済制度の対象外です
  • 主な副作用に吐き気・嘔吐・下痢・便秘などの消化器症状があり、低血糖等のリスクもあります。効果や副作用には個人差があり、医師の診察が前提です

参考文献


  1. ウゴービ皮下注(セマグルチド(遺伝子組換え))添付文書・承認情報 — PMDA https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/rdDetail/iyaku/2499418G5023_1 ↩↩↩↩↩↩↩↩

  2. ビクトーザ皮下注(リラグルチド(遺伝子組換え))添付文書・承認情報 — PMDA https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/rdDetail/iyaku/2499410G1021_1 ↩↩↩↩↩

  3. オゼンピック皮下注(セマグルチド(遺伝子組換え))添付文書・承認情報 — PMDA https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/rdDetail/iyaku/2499418G4027_1 ↩↩↩

  4. Exposure-adjusted safety and efficacy of GLP-I and GLP-1/GIP receptor agonists compared with non-GLP-I for weight management and type 2 diabetes — PubMed https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41902330/ ↩↩↩

  5. A Narrative Review of the Metabolic Benefits of GLP-1 and GIP Receptor Agonists in Obesity — PubMed https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41897188/ ↩↩↩↩↩

  6. Real-World Cardiovascular Outcomes of Obesity Treatment With Tirzepatide Versus Semaglutide in Non-Diabetic Adults — PubMed https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41891334/ ↩↩

  7. Patterns of Thyroid-Stimulating Hormone Test After GLP-1 RAs Initiation in Patients on Levothyroxine: A Trial Emulation Study — PubMed https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41902399/ ↩↩↩

  8. 肥満症治療剤「ゼップバウンド皮下注アテオス」薬価基準収載および発売のお知らせ(承認・薬価収載・発売の各日付) — 田辺三菱製薬 https://www.tanabe-pharma.com/ja/news/MTPC250319.html ↩

  9. 「ゼップバウンド皮下注アテオス」閉塞性睡眠時無呼吸症候群に係る効能又は効果等の追加承認取得のお知らせ — 田辺三菱製薬 https://www.tanabe-pharma.com/ja/news/rel_260601_2.html ↩

  10. 「ウゴービ皮下注」代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)に係る効能又は効果の追加承認取得について — ノボ ノルディスク ファーマ https://www.novonordisk.co.jp/news/media/2026/06/20260619_1.html ↩

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